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映画配給会社「Cinemago」プロデューサー・ディストリビューター 出町光識さん

バーチャルオフィス会員の出町さんは、陶芸家、アートディレクター、映画感想レビュー&考察サイト「Cinemarche」前編集長を経て、現在は映画配給会社「Cinemago」のディストリビューター、そして「株式会社ゆかし」の代表をされています。今回はそんな多才な出町さんにお話を伺いました。

 

 

GOODWORKスタッフ猪股(以下猪股):本日はお忙しい中お時間をいただきましてありがとうございました。宜しくお願いいたします。
はじめに、GOODWORKのバーチャル会員になられたきっかけを教えて下さい。

出町さん:2016年頃、日本橋馬喰町にあるシェアオフィスのレンタルルームに、元映画館で一緒に働いていた仲間を集めて「映画情報サイトを作ろう」とプレゼンテーションしたことが、このような施設を初めて利用した体験でした。当時は、シェアオフィスやコワーキングは一般的に浸透する以前だったと思います。2019年に世界的な事件となるコロナウイルスをきっかけに、弊社のメンバーに自宅勤務をベースにするよう促し、社内での業務連絡はビジネスチャットのChatworkを利用し、定例ミーティングもZoomなどのリモート通話に完全移行をさせました。それでも会社の住所登録や本拠地を自宅に移してしまうと、仕事とプライベートを分けることが容易ではないと考えている時にGOODWORKをインターネットの情報閲覧で見つけました。バーチャル会員として登記登録をして、どうしても対面でのミーティングが必要な場合は、会員割引のある会議室を利用させていただいています。ちなみに、余談になりますが近くにある代々木八幡さまの氏子会員にもなりました(笑)。

猪股:出町さんにはGOODWORK初期から会員になっていただいていますよね。ありがとうございます!

出町さん:ちょっと脱線してしまうのですが、基本、僕は誰よりも早く物事を始めたいと考えているタイプで、中・高校時代のあだ名は「出だしの出町」でした。校内マラソン大会のスタートは陸上部について行ってぶっちぎりでリードするのですが、最後はやっぱり抜かれてしまっていました(笑)。出だしだけは誰よりも早くという心情は、今でも変わっていません。子供の時はクラスメイトよりも背が低く、身体が小さかったので他の子に付いていくのが必死で負けたくないという気持ちが強かったのだと思います。とにかく周囲をよく観察して、物事を早く始めたいという気持ちがあったからこそ、シェアオフィスの利用を始めたのも、GOODWORKさんを見つけたのも早かったのでしょう。GOODWORKさんは価格が手ごろで安いということ以外にも、近くに代々木公園や裏渋通りがあるのも個人的に良いなと思っています。

猪股:差し支えない範囲で出町さんのお仕事やお住まいなど教えて下さい。

出町さん:インターネットによる映画情報メディアの運営部と、映画館で映画を上映する配給に従事しています。それもあって映画関係の方たちとの仕事が多いことから、新宿や渋谷へも出やすい小田急線沿線に住んでいます。まあ、学生時代は新百合ヶ丘駅にある、日本映画学校(現在の日本映画大学)に通学していたので、やっぱり小田急線が好きなんだと思います(笑)。

猪股:1日のスケジュールを教えて下さい。

出町さん:早朝午前2時から3時の間には起床をすませ、午前7時前には外部とのメール連絡を確認と返信。弊社スタッフにはChatworkで指示の連絡を終わらせます。これは、陶芸家の師匠であった鯉江良二先生から「人が寝ている時間に仕事をしろ」と言われたからです。他にも現代美術家の井田照一先生や折元立身先生などの師匠がおり、先生から頂いた精神的支柱となる言葉は、若いスタッフに伝えるようにして彼らを導いています。

猪股:お休みは定期的に取られていますか?

出町さん:なるべく週末は仕事をしないようにしています。家人であるパートナーと過ごすようにしていますね。山の神は怒らせると怖いですから(笑)。ですが、新作映画の劇場公開は週末始まりなので、それが土曜日始まりの場合は、なかなか難しいですね。あと、年末年始は働きません。年神様をお迎えしたり、初詣に代々木八幡さまに行くことが仕事以上に人として大切だと思いますし、ゆっくりしたいです。それと桜や紅葉などの季節をめでられる頃は、まとまった休暇を取るようにしています。

猪股:お仕事で海外に行かれたりしますか?

出町さん:昔はありましたが、今はインターネットがあるので行く機会はだいぶ減りましたね。陶芸家でいた頃は、毎年韓国で個展を開いていましたから、よく海外に出張をしていました。1998年当時の日本は、経済や文化の面いずれも、まだまだ勢いがありましたから、彼らも特別扱いで注目してくれていました。僕も若いなりにがむしゃらで自主的に韓日交流イベントをよく行政と一緒に行っていました。しかし、2010年くらいなると、韓国側の主催するイベントは、韓中日交流イベントに変化を見せます。韓国人の方たちは、中国人が入ってきてからは誰もが大国である中国へとビジネスチャンスを見出すように成ったのが手に取るように理解できました。陶芸家ですから優劣はなく勝ち負けではないですが、敗北感も味わいました。これも陶芸家を辞めた一つの理由なのかもしれませんね。「出だしの出町」が風向きを読んだ訳です(笑)。なぜ、この話をしたかというと、初めて自ら海外映画を買い付けた海外セールス会社は、実は中国人の会社なのです。今は中国人の海外セールス会社と、制作会社の2社とお付き合いがあります。そのセールス会社は日本でのビジネス展開がまだない会社でしたが、2023年の東京国際映画祭の際に、その会社の代表と新宿で宴会をしたのですが、今では日本にある映画配給5社と付き合っているそうです。一番初めに契約をしましたから、やはり「出だしの出町」なので(笑)。今日は2024年1月20日より劇場公開する中国映画『海街奇譚(うみまちきたん)』の劇場ポスターを持ってきたので貼ってください!(GOODWORK受付に掲示しています。チラシもカウンターに置いています)

猪股:素人発言なのですが・・・たまに中国のドラマや映画を観る機会がありますがスケールが違いますよね。

出町さん:はい。若い年齢の監督でも日本に比べると製作費の規模が大きく異なります。中国映画は、かつて学生時代に映画祭の予備審査員をやっていたことがありますが、2010年代後半までは観ているのが辛くなるほどのレベルのものも多くありました。しかし、中国の経済発展と共に急激な映画への投資や、表現をする純度もレベルアップしました。余裕のある人たちがアーティストに投資することがステータスになるんです。これは日本以外では一般的なことかもしれません。もちろん、お金があるから良い映画ができるとは限りませんけどね、表現は“貧しくとも自由”ですから(笑)。

猪股:出町さんが観て、どの映画を買うか決められるのですか?

出町さん:初めは日本で制作されたインディーズ映画を他の配給さんの力を借りて配給していました。2024年は弊社は設立して5年目を迎える勝負の年になります。1月には中国映画『海街奇譚』、2月はカナダ映画『COME TRUE/カム・トゥルー 戦慄の催眠実験』、3月はアメリカ映画『キック・ミー 怒りのカンザス』、夏頃にベトナム映画『Kfc』を公開予定です。その次はマレーシア映画かな。最近はベネズエラ映画も仕入れてきました。観てもらいたい映画が多いんですよね(笑)。

猪股:プライベートでの趣味やリフレッシュについて教えてください。

出町さん:趣味が仕事みたいなところはありますが、「どう見せるか」ということをすごく大切にしています。例えば陶芸家の頃は作った器の制作過程のコンセプトを説明したり、ラッピングをしたり、商品としてのプランニングをいかにするかということを常に考えていました。それが今の映画配給に通じており、やはり仕事が趣味かな(笑)。リフレッシュは・・・「映画を観ること」と言いたいとこですが、嘘になりますね。今はダイエットです。1日1万歩は歩くようにしています。たくさん歩くと頭の切り替えになるんですよ。あとは、美味しいものを食べることも好きです。

猪股:お料理もされますか?

出町さん:やりますよ!全ての師匠から「料理ができない人はアーティストになれない」と言われていました。料理の味がわかること、素材の活かし方がわかること、下ごしらえの大切さで手を抜かないこと、他者に振舞いのおもてなしを自ら作れること。今でも、僕はアーティストなので(笑)。

猪股:最後に今後のビジョンや映画を通じて伝えたいことなどありますか。

出町さん:せっかく良い映画を見つけて、たくさんの人に観てもらおうと思っても、戦争などの世界情勢などもあり、その国で作られた映画や、その国の映画祭で認められた映画など、宣伝に障害となる出来事がよくあります。しかし、映画と戦争って相性のよい同類コンテンツなんです。戦争を実行する、大義名分を作る、大衆を高揚させて扇動するために利用されたメディアが映画なのです。ですからヒットラーも映画大好きだったし、プロバガンダとして使っていました。ウォルト・ディズニーも戦争大好きでしたし、戦時中はミッキーマウスが「日本をやっつけろ!」みたいに動いているアニメばかりでした。どうやって人を洗脳し、自分の国のために戦わせるかという時に映画は利用されてきて、現在まで戦争と映画は進化し続けています。映画だけでなく、「映像」も。記憶に新しいと思いますが、CNNで湾岸戦争のゲームみたいな電光石火の映像が流れてきて、当時は衝撃を受けましたよね。今でいえば、ウクライナの戦場を市民がスマホで世界発信をし、ガザ地区では実際に戦っている光景を見世物のようにリアルタイムで映像として見せる。またフェイク動画による情報戦なども巻き起こり、映画や映像と戦争は切り離せない存在で、手軽に海外の情報や他者の考えを知るためのコンテンツとして宿命をおびています。それでも、そのようなことばかりでなく、移民・ジェンダー・差別など様々な問題について、「考える」きっかけを与えるのも映画なんです。映画は確かに、誰かの意思が情報をフレームで切り取った「動画」かもしれません。ですが、少しでも外の世界・広い視野・多様性の共存が得られるように、まだまだ知らない国々や、多国籍の映画監督が制作した映画を集め、「おもちゃ箱」みたいな会社を目指して、日本にいる映画ファンに届けていきたいです。

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